中央線で耳の後ろ

通勤の電車にて、乗り合わせた後ろ姿の中にとてもきれいな耳を見付ける
持ち主は中年のサラリーマンで、
こちらに背中を向けて立っているから耳も後ろ側しか見えないのだけれど
それがつやつやのつるつるに美しい
思わずじーと見てしまう
自分の耳の後ろ姿なんかよほどのことがない限り見る機会はなく、
きっとこのおじさんも自分のそれがとても美しいだなんて知りもしないんだろう
なんだか純度100%のものを見たみたいでうれしくなる


本人もたぶん一生気付かないその美しさに、何の意味があるんだろうか
とか考えてみるけれど
そんなのひどく野暮だ



朝の通勤時と言えば、ここ最近いつも涙がぽろぽろこぼれる
乾燥しているからかしらん
原因はよくわからない
拭いても拭いても流れ出て、落ちて落ちてマフラも濡らす
小さい頃、横で寝ている母の目から涙がつるんと垂れるのを見ていちいち不思議だった
コンタクトレンズを外したから」と母は言ったけど
感情とは無縁の涙があるということがうまく理解出来なかった
でも、全然あるのだよと小さい頃の私に教えてやりたい
今の私は、毎朝マフラが濡れるくらいに無意味な涙を垂らしている
前の晩のわるいことを洗い流す涙なのかも、
なんて考えるのは
まったくの野暮だ